特別展示「秘伝千羽鶴折形の再現」の開催にあたり
「秘伝千羽鶴折形」は1797年に日本で刊行された現存する世界最古の遊戯折り紙に関する出版物です。この本はこれまで何人かの折り紙の古典研究者によって解説書が書かれていますが、すべて日本語で書かれているため、海外の折り紙愛好家がその詳細を知るのは困難でした。また、この本では古い書体が使われ現在使われていない古語も多数含まれているため、日本人にとってもこの本の詳細を知ることは容易ではなく、紹介されている作品を実際に折る機会はほとんどないのが現状です。
折紙アートミュージアムは、日本折紙学会の若手会員を中心にこの本に紹介されている作品の再現ならびに本文の解釈と翻訳を試みています。そして、完成した作品の画像だけでなく作品の再現過程も画像に記録することよって、この本の詳細を海外に分かりやすく紹介するとともに、近年精力的に折り紙作品を創作している若手オリガミアンに折り紙の古典に触れる機会を与えたいと考え、この特別展示「秘伝千羽鶴折形の再現」を企画しました。
作品の再現と本文の解読に際していくつかの問題に直面しました。これらに関しては担当者による解説コラムを設けています。
なお、底本は日本折紙学会が所蔵する「秘伝千羽鶴折形」(魯縞庵、1797)ですが、作品の再現や本文の解釈と現代語訳にあたって、以下の文献を参考にしています。
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岡村昌夫(2002)『つなぎ折鶴の世界―連鶴の古典「秘伝千羽鶴折形」』本の泉社
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岡村昌夫(2006)『改訂版 つなぎ折鶴の世界―連鶴の古典「秘伝千羽鶴折形」』本の泉社
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笠原邦彦(1976)『おりがみ2 江戸の古典盧縞庵作 千羽鶴折形』すばる書房
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笠原邦彦(1976)『新板 千羽鶴折形』すばる書房
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日本折紙協会編(1991)秘伝千羽鶴折形解説142p.
特に作例の改訂案や別案については、岡村昌夫氏の『改訂版 つなぎ折鶴の世界―連鶴の古典「秘伝千羽鶴折形」』(本の泉社)に準拠しました。
(文責:津田良夫)